市史編さん草子「市史で候」 六十一の巻 「昭和の団地資料が語るもの」

ページ番号1001928  更新日 2020年9月24日

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市史編さん草子(ぞうし)「市史で候(そうろう)」 市史爺(ししじい) 清瀬市は、昭和45(1970)年10月1日誕生。市制施行50周年を視野に入れ、現在、清瀬の歴史をまとめる事業を展開中です。当ブログでは事業の経過報告のほか、清瀬の歴史や文化、自然を楽しくご紹介しています。

六十一の巻:「昭和の団地資料が語るもの」【令和元年9月19日更新】

うちに、こんなものがあったから、よかったら。

そう言って、旭が丘団地にお住いの方がある日持って来てくださったのは、昭和40年代の団地内地図や自治会の資料、ガス湯沸かし器や風呂釜、換気扇の取扱い説明書、清瀬市が発行した「私の便利帳」、市制施行記念に全戸配布された「清瀬市全図」、西武池袋線の時刻表などなどなど。

写真:昭和40年代の旭が丘団地関連資料いろいろ

是枝裕和監督の映画「海よりもまだ深く」の舞台ともなった旭が丘団地。
入居が始まったのは昭和42(1967)年9月のことでした。

一連の資料のなかに、昭和45(1970)年2月12日木曜日の朝日新聞PR版がありました。
新聞ロゴの下に「ニュータウン」、朝日新聞東京本社宣伝課発行。

一面を飾るのは旭が丘団地の航空写真です。
ご自分の入居した団地の記事ですから大切にとっておかれたのでしょう。
紙面の色は、約半世紀の時の流れを映しています。

団地全域と周辺が写る大きな写真の脇に、

清瀬 旭が丘 環境バツグンの“孤島” 緑ふんだん、子ども天国

の文字が踊ります。

記事によると、旭が丘団地の2100戸という規模は、清瀬で最大。
この団地の人口は7千人あまり。
昭和45年1月1日現在の清瀬町の人口は4万9千人。
旭が丘団地の人口は、町の人口の7分の1を誇っていたわけです。


時を刻んだ新聞紙と同様の赤茶けた印刷物もあります。

入居者向けの冊子の一部でしょうか。わら半紙にガリ版刷り。
ボールペンの線は、小さな子どもの落書きでしょうか。生活感あり。いい感じです。

写真:「団地生活の手引き」

抜き取られたページの冒頭に「IV 団地生活の手引き」とあり、当時、鉄筋コンクリート造りの「団地」の生活が、それまでとは何か異なる新しい暮らしだったのだろう、と思わせる次のような文言が続きます。

例えば、

アパートの生活は鍵の生活です。
気軽に外出できるのでアパートは実に便利だと言われていますが、それは、シリンダー錠があなたのお留守をお守りしているからなのです。シリンダー錠は時計と同じような精密な機械ですから大切に扱って下さい。…

便所

トイレット・ペーパーを
便所は水洗式ですから、用紙は必ずトイレット・ペーパーをご使用願います。
綿、新聞紙、布切れ、流行生理用品等を流しますと、排水管が詰まり、汚水が逆流して使用不能となるばかりか、階下の方や同一屋内排水管を使用する方々に迷惑が及びますので絶対に止めましょう。…

バルコニー

楽しいコーナーに
バルコニーはベランダともいいますが、ここは、専用の庭を持たないアパート生活に潤いを与える唯一の場所です。
居間の延長として効果的に使用してください。…

災害の時の心構え

安全は心構えで
公団住宅は、ご存知のとおり、耐震、耐火、耐久上極めて理想的な鉄筋コンクリート構造です。どんな災害のときでも少しも心配することはありませんが、地震、火事、台風などのときに対する心構えについて、ひととおり知っておくのもためになることです。…

台風

どんなに強い風が吹いても、建物が倒壊することはありませんが、雨水が窓その他から吹込まないようビニール、雑布などですき間をふさいでください。…

 

ここに越してきた時は “これでもう台風の心配しなくて済むんだ” ってホッとしたけど…
まさかここに40年も住むことになるなんて思わなかったわね


映画「海よりもまだ深く」の中で、樹木希林さん演じる母親がそう語る場面があります。
団地に越して来る前の家では、台風が来るたびに屋根が飛ばされないか心配した、と。
台風の心配をしなくていい。その安心感は団地に暮らし始めた人たちの実感だったのでしょう。

わら半紙の団地資料の「台風」の欄で、「どんなに強い風が吹いても、建物が倒壊することはありません…」とあるのを読んだ瞬間、この場面を思い浮かべたのは筆者だけではないのでは。

旭が丘団地で育った是枝監督。ずっと団地を舞台にした家族の話を描きたいと思っていたといいます。
せっかくならば記憶の中にある団地の表情をちゃんと残しておきたい、という思いで撮った作品といわれる「海よりもまだ深く」。
実話ではないけれど、エピソードの細かいところにはかなり実体験が反映されているとか。

登場人物の台詞にはめこまれた時代の記憶。文字資料が同じことを語っていますね。


市史編さん専門部会の現代部会では、清瀬の昭和、平成の生活がわかる資料を求めています。

どうして資料が欲しいのか。
まず、伝えられている話を裏付けすることができます。
のみならず、新しい資料が出てくることで以前からある資料の読み解きが助けられ、資料価値に奥行きを与えることがあります。
そしてまた、ああ、あの頃ああだった、こうだった、という手記的な情報が加わることによって、他の資料との関連が見えてきたり謎が解けてきたりします。

写真や赤茶けた書類を見ていると、ふだん忘れている昔の記憶が急によみがえってくる...
そんな経験はありませんか?
よみがえった記憶の断片情報を、ホームページ経由、市史編さん室宛のメールでつぶやいて教えてください。(頁末の投稿フォームから、ぜひ)

思い立って押入れの奥から古いアルバムやファイルを取り出してみた方、見つかった「市民生活の証拠品」を、ぜひぜひ見せて下さい。

町内会の記録、PTAの会報、学級だより、商店のチラシ、街並みが写った写真、等々。

みなさまの大切な資料ですから、写しをとらせていただいたのち、現物はお返しします。

うちに、こんなものがあるんだけど...

市史編さん室では、首を長くしてご連絡お待ちしています。

 

参考

  • 「海よりもまだ深く」(映画パンフレット) 松竹株式会社事業部 2016
  • 『海よりもまだ深く』 是枝裕和 佐野晶 幻冬舎文庫 2016
  • 『映画を撮りながら考えたこと』 是枝裕和 ミシマ社 2016

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