市報連載コラム「清瀬と結核」第4話~第6話
市報きよせ 連載コラム「清瀬と結核」~病院街の形成~
令和4年(2022)4月、『市報きよせ』にコラム「清瀬と結核」を開設しました。これまでに掲載されたものをご紹介します。
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第4話 ベトレヘムの園(令和4年9月1日号)
昭和6年の府立清瀬病院に続き、昭和8年には療養農園「ベトレヘムの園」が開かれました。
ベトレヘムの園を開いたフロジャク神父は、昭和2年、江古田の東京市療養所に初めて患者を見舞い、結核患者の困窮と惨状を知りました。そして、療養所近くに患者と患者の子供たちの居場所となる施設を設けましたが、もっと多くの患者を受け入れられるよう、軽快患者のための農園(コロニー)を開きたいと考えました。
その後、清瀬で理想的な土地と出会い、これが実現します。療養農園「ベトレヘムの園」の誕生です。多くの人からの寄付や皇室からの御下賜金(ごかしきん)に支えられたといいます。療養農園の収容人員は60人で、患者の栄養補給のために乳牛も飼っていました。
療養農園開園の2年後、昭和10年には病院認可を受け、「ベトレヘムの園病院」が誕生しました。
栄養失調と結核で倒れる人も多くいた昭和12年ごろには結核患者の行路病者が担ぎ込まれることもよくあり、フロジャク神父は自身のベッドも差し出して患者を収容したといいます。
昭和15年、御下賜金による紀元二千六百年記念恩賜病棟が竣工し、200床の増床となりました。外気舎も昭和13年に5棟、16年に13棟増築されています。
昭和19年の夏、病院のベッドはすべて木製にしたという記録は、戦時の空気をうかがわせます。
写真:開院当時のベトレヘムの園病院玄関
(社会福祉法人慈生会提供)
第5話 東星学園(令和4年10月1日号)
病院街には療養所だけでなく、関連の施設も開かれていきました。
結核患者のための療養農園ベトレヘムの園を開いたフロジャク神父は、患者の子どもたちのための家を江古田の東京市療養所近くに用意していましたが、より大きな施設が必要と考えるようになりました。
そして昭和9年、清瀬の療養農園ベトレヘムの園に離接した土地7,500坪を手に入れ、養護施設東星学園を建設したのです。
学齢に達した33人を清瀬に移し、児童の教育のため、東星学園施設内に昭和11年4月、東星尋常小学校を開設しました。これが、のちの東星学園小学校です。周辺地域の入学希望者も通い、施設の子供と通学生がともに学びました。戦後、近くに置かれた引揚者寮の子どもたちも、芝山小学校開校前は多くが東星学園の小学校に通ったといいます。
幼稚園は、昭和13年に園舎を建設、昭和15年に認可を受けました。中学校開設は昭和22年です。
昭和28年にはベトレヘムの園に準看護学院が開かれ、療養所の医療従事者を育成しました。また、昭和31年には定時制東星女子高等学校が開校し、日中働く人たちの学びの場となりました。昭和42年に開かれた東星学園高等看護学校からは優秀な看護師が巣立ち、病院街などで活躍しました。
養護施設として始まった東星学園は、昭和37年にベトレヘム学園と改称され、東星学園は学校法人として歩みを重ね、現在に至っています。
写真:昭和9年ごろの東星学園全景
(社会福祉法人慈生会提供)
第6話 府立静和園(令和4年11月1日号)
東京府立静和園は、昭和9年に開かれた結核軽快患者施設でした。
結核は慢性の感染症で、昭和初期においてはまだ薬もなく、不治の病と言われていました。そのため、感染を恐れて結核患者を敬遠する空気がありました。こうした状況下では、幸いにして回復し退院できても、就職も住居探しも難しいことが多く、社会復帰は容易ではありませんでした。
静和園は、こうした軽快患者を受け入れる施設でした。入園者は医師の目が届くところで経過観察を受けながら、農園芸や工芸などの軽作業で体力をつけ、職業教育も受けて社会復帰に臨んだのです。清瀬病院に就職した人も少なからずいました。
静和園での作業療法は、隣接する清瀬病院の協力で医学的見地に基づき行われました。静和園は、結核軽快患者の作業療法施設としては国内最初の公立施設であり、清瀬は日本の作業療法発祥の地ということができます。
ところが戦争が激しくなり、徴用などで退園する人が相次いだ結果、静和園は終戦を待たず閉じられてしまいました。
残された建物は、昭和20年に空襲で焼け出された都立深川産院の一時移転先となり、また、その後昭和23年には都立清瀬小児結核保養所開設の舞台となりました。
すなわち、都立清瀬小児病院の前身は、元静和園の建物で産声をあげたのでした。
図版 :『東京府立清瀬病院年報 第八』掲載の病院配置図に見る「静和園敷地」の文字
https://www.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1046211
(境界線・文字の囲みを加筆)
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