市史編さん草子「市史で候」 五十一の巻 「ハイスピードで拓本は」

ページ番号1001939  更新日 2020年9月24日

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市史編さん草子(ぞうし)「市史で候(そうろう)」 市史爺(ししじい) 清瀬市は、昭和45(1970)年10月1日誕生。市制施行50周年を視野に入れ、現在、清瀬の歴史をまとめる事業を展開中です。当ブログでは事業の経過報告のほか、清瀬の歴史や文化、自然を楽しくご紹介しています。

五十一の巻:「ハイスピードで拓本は」【平成30年8月24日更新】

写真:板碑の一例(郷土博物館蔵)

来年度平成31年度に刊行を控える『清瀬市史3 資料編 古代・中世』。
目次構成が固まり、追い込みの調査が続くなか、刊行に向けての準備が着々と進められています。

古代・中世の資料編には、古文書のほか、板碑の拓本も掲載されます。

板碑って?
板碑は中世に立てられた供養塔の一種で、石で作られた塔婆(とうば)です。
板状にした石材に、仏をあらわす梵字(ぼんじ)、年月日、人名、造立の趣旨などの文字が刻まれています。

右の写真をごらんください。こんな感じのものです。
この板碑は、野塩外山遺跡から出土したもので、清瀬市郷土博物館が所蔵している板碑のひとつです。

市内にある板碑の数々。
この夏の暑さの中、その拓本採りの作業が進められています。

写真:作業室で拓本採り

作業の様子を覗いてみましょう。

写真は、コミュニティプラザひまわり、通称「コミプラ」にある市史編さん室の作業室です。

コミプラは元・都立清瀬東高校(略称「東高」)の校舎を利用した施設で、この作業室は東高時代の被服室。
据え付けの大きな机が鎮座しています。

写真手前の机に並べられているのが拓本です。
中央の机で作業が続いています。

右奥の机の上にある茶色い木製の箱には板碑が入っています。


写真:拓本採りの手順 1)、2)、3)

さて、拓本の採り方です。

1)対象の板碑を水平に置く。

2)板碑の上に紙(画仙紙)をのせる。

3)ハケで紙に水を含ませて板碑に貼りつけていく。


写真:拓本採りの手順 4)、5)

4)タオルで余分な水分をとり除きつつ、細かい凹凸にも沿わせて板碑と紙を密着させる。

5)余分な水分を、さらに重ねた紙に含ませて入念にとり除く。
含んだ水分が多いと墨が浸み込んで板碑を汚してしまうし、乾かしすぎると紙がはがれてしまうので、加減が難しいところです。


写真:拓本採りの手順 6)、7)

6)タンポを使って拓本用の墨をのせていく。「墨を打つ」という。

7)板碑の輪郭(全体の形)、彫刻や加工の跡がよくわかるように、端の部分まで全体に墨をよくのせて紙に写していく。
濃くしすぎないように注意。


写真:拓本採りの手順 8)

8)墨を打ったら紙をはがし、広げて乾くのを待つ。


写真:ひとつひとつの板碑の記録をとる

拓本を採った板碑については、ひとつひとつ記録をとります。

巻尺で縦横の長さを測り、ノギス(右の写真手前に写っている道具)で厚さを測り、数値を記入。
その他、刻まれている文字や加工痕、断面の形状、金箔や漆の跡など分かった事全て、略図を付けて記録していきます。


手順は多くありませんが、ものごとシンプルに見えるほど実は難しい。
拓本採りも、しかり。

紙を板碑に密着させるにも、墨をいいあんばいに打つにも、技が必要。
写真の伊藤宏之先生(古代・中世部会専門調査員)による拓本採りは、さくさくとハイスピードで進んでいきます。

板碑そのものを見ていたときにはよく見えなかった文字が、拓本ではくっきり浮かんで見えます。
紙と水と墨とで板碑から過去の記憶を呼び覚ましているかのようです。

採取された拓本は、平成31年度刊行の『清瀬市史 3 資料編 古代・中世』第3部に掲載されます。
乞うご期待!


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