市史編さん草子「市史で候」 六十六の巻「清瀬の縄文ムラと中期縄文文化」

ページ番号1002635  更新日 2020年9月28日

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市史編さん草子(ぞうし)「市史で候(そうろう)」 市史爺(ししじい) 清瀬市は、昭和45(1970)年10月1日誕生。市制施行50周年を視野に入れ、現在、清瀬の歴史をまとめる事業を展開中です。当ブログでは事業の経過報告のほか、清瀬の歴史や文化、自然を楽しくご紹介しています。

六十六の巻:清瀬の縄文ムラと中期縄文文化【令和2年5月1日更新】

市史講演会第4回(令和2年1月開催)では、考古部会長の谷口康浩先生に縄文時代のお話をしていただきました。

題して「清瀬の縄文ムラと中期縄文文化」。当日のスライドとともに、内容を簡単にご紹介します。

写真:土器
有孔鍔付土器(ゆうこうつばつきどき、高さ約50cm)
(野塩前原遺跡出土、清瀬市郷土博物館蔵)

縄文時代、縄文文化は、温暖な環境の中で発展、発達した文化と講師は捉えています。
縄文時代中期(約5400年前~4400年前)に、清瀬を含む多摩地域の縄文文化は量、質ともにピークを迎えます。

図 縄文時代の年代、時期区分と環境史のグラフ
縄文時代の年代、時期区分と環境史

清瀬の代表的な縄文時代中期のムラの跡は、野塩4丁目に広がる野塩前原遺跡群です。
野塩前原遺跡群は、他の清瀬市域・所沢市域の遺跡とともに、所沢市の和田遺跡を拠点集落としたムラの一つと考えられます。

井戸尻・勝坂文化

縄文時代中期の活気を生み出した文化を、講師は「井戸尻・勝坂(いどじり・かつさか)文化」と呼んでいます。「井戸尻・勝坂文化」は北陸に起源を持ち、中部高地から関東地方南西部に広がる内陸性の文化です。代表的な物質文化(モノと、モノの製作、運用、にかかわる技術、知識の総体をいいます)は、勝坂式土器、土偶、大形石棒、ヒスイ製品です。

清瀬市の野塩前原遺跡でも、勝坂式土器が見つかっています。その土器の造りの精巧さからは、清瀬市域にも中部高地から人が移動してきたことがうかがえます。

写真:土器と講師
勝坂式土器(野塩前原遺跡出土、清瀬市郷土博物館蔵)・大形石棒と講師(長野県佐久町北沢にて)

レプリカ法

縄文時代中期には、和田遺跡のような拠点集落が関東南西部全域に作られ、大幅に人口が増えたと考えられます。

拠点集落を中心としたムラのまとまりの領域は、平均約50平方キロメートル未満と推定されています。狩猟採集民としては狭い領域が隣接して、平和的に生活が営まれた理由を考えた時、縄文農耕論が注目されます。

1980年代以降の調査研究法の進展によって、縄文農耕論の証拠が見つかってきています。重要な調査法の一つがレプリカ法です。土器に残された圧痕のレプリカを作成し、圧痕のもととなった植物を調べる方法です。

写真:レプリカを作っているところ
土器片の圧痕にシリコンを注入し、レプリカを作ります
写真:圧痕のレプリカ
圧痕のレプリカ

清瀬市史編さんのための調査では、野塩前原遺跡から出土した勝坂式土器の浅鉢に35点の圧痕を検出し、そのほとんどがダイズ属のマメの圧痕であると同定されました。

写真:浅鉢
圧痕が多数見つかった浅鉢
(野塩前原遺跡出土、清瀬市郷土博物館蔵)
写真:電子顕微鏡写真
圧痕レプリカの電子顕微鏡写真
(ダイズ属種子圧痕)

縄文時代中期の文化の隆盛と、人口増加の背景には、マメの栽培もしくは農耕の技術があったことが、清瀬の縄文ムラからも言えそうです。

チラシ:清瀬の縄文ムラと中期縄文文化


当日の参加者は定員50名のところ44名でした。
市史編さん室では今後も清瀬市の歴史を取り上げた講演会を行っていきます。ぜひご参加ください。

縄文文化をもっと知りたい方に

  • 谷口康浩2019『入門縄文時代の考古学』同成社
  • 小林達雄1996『縄文人の世界』朝日新聞社

 

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